年収400万じゃムリ? 子どもを大学進学させるための公的制度2つ

【ママからのご相談】
小5の息子がいる40代の母です。先日、わが国では年収400万円の家庭の子どもの大学進学率は3割しかないことを知り、がく然としました。わが家がまさにそのくらいの年収だからです。一方で東大生の親の平均年収は1,200万円と聞き、ますます腹が立ってきました。

私も夫も収入は大したことありませんが、大学で学んだおかげで最低限の知性や論理性、公共心や多様な価値観を受け入れる度量などを身につけることができたと思っています。だから収入はこの程度でも、息子は必ず大学に進学させてやるつもりです。そのために利用できる金銭面での公的支援制度がありましたら、どのような情報でもいいので教えてください。

a “国の教育ローン”と“奨学金”は併用可能。どちらも利用しましょう。

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ご相談ありがとうございます。

ご相談者さまの憤りは、私も含めて子どもをもつ一般的な生活水準の親にとっては、ほとんどの人が共感できるものだと思います。わが国の学費は高額所得者以外の人々にとって、高すぎます。

けれどもその状況を嘆いているだけではいけません。そうである以上は、せめて今ある公的支援の制度をフルに活用して、庶民感覚を持った優秀な子どもたちに質の高い教育を受けてもらい、いずれ彼らの創造力がこの社会全体の利益となって帰ってくるように心がける必要があります。

その意味でここでは、併用ができる“国の教育ローン”と“奨学金”についてご紹介します。記述にあたっては都内で小児科クリニックを開業しながら、わが国の高すぎる教育費の問題と取り組んできた小児科医師に聞いたお話しを、参考にさせていただきました。

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わが国の公的奨学金とOECD加盟各国の奨学金の違い

わが国の公的な“奨学金”の代表格といえば、文部科学省所管の独立行政法人が根拠法に基づいて開設している奨学金ですが、無利息の第一種奨学金であれ利息付の第二種奨学金であれ、返済義務を有する“貸与型”の奨学金で、“融資”の一種です。

債務者は奨学金を必要とする生徒・学生本人であるため、卒業後に正社員として就職できた人ならまだしも、非正規の職にしか就けなかった人にとっては非常に重い返済義務が卒業後に生じてくるので、いわゆる“返せない奨学金”の問題が近年とり沙汰されるようになってきたわけです。

例えば月8万円の利息付奨学金の貸与を受けて四年制大学を卒業した子は、卒業と同時に384万円の債務を背負うことになります。これは利率にもよりますが卒業後20年の間、毎月毎月2万円前後の金額を返済しつづけなければならないことを意味しており、月収も低く賞与もない非正規雇用の人にとっては相当高いハードルといえます。

『フランス・ドイツ・オーストリア・ノルウェー・フィンランド・スウェーデンなど、OECDに加盟しているヨーロッパの多くの国々で、学生の授業料は無償です。また、アメリカ合衆国・イギリス・ベルギー・オランダ・ニュージーランド・スイスなどの授業料が有償のOECD加盟国であっても、奨学金は返済義務のない“給付型”が充実しています。

行政がいくら“少子化に歯止めを”と言っても、国立大学の授業料が標準額で53万5,800円にのぼるのに奨学金が給付型でないわが国で子どもを産み育てることを躊躇する若者が多いことは、いたしかたないことと言えます』(50代男性/都内小児科クリニック院長・小児科医師)

“国の教育ローン”は学生自身は債務者にならないので大いに“奨学金”と併用すべき

そこで注目したいのが、財務省が所管する特殊法人が用意している“国の教育ローン(教育一般貸付)”です。これであれば、ご相談者さまのように子どもの人数が1人の家庭であれば世帯年収が790万円以内なら誰でも利用でき、用途も入学金・授業料・在学のためのアパート代・研究のためのパソコン代と多岐にわたって認められており、最高350万円まで借入が可能です。

そして何よりも“国の教育ローン”は債務者(返済義務を負う人)が学生・生徒の保護者であるため、学生本人が債務を負う“奨学金”とリスクの分散ができるという点が重要で、この2つの公的支援制度をバランスよく併用することによって、将来の返済リスクの何もかもを子ども自身が負うという状況を回避することができるのです。

「正社員として就職できなかったら」などと考えない。“返済猶予”措置の申請も可能

奨学金と国の教育ローンを併用すれば、年収400万円の家庭でも十分、子どもを大学で学ばせてやれることは、お分かりいただけたかと思います。

『その際「万が一、卒業後に正社員として就職できなかったらどうしよう」といった心配は、今からしたところで仕方がありません。奨学金であれば複数の連帯保証人と保証人(学生の親の他に近隣に住むおじ・おば等)をとりますし、国の教育ローンであれば保証協会が保証をします。公的金融機関の取りっぱぐれの心配などは若い人はせずに、とにかく学業に集中することこそ、ひいては滞りなく返済できることにつながるのです』(前出・小児科医師)

「そうはいっても必ず正社員として就職できるという確信など、とても持てない」という若い人が数多くいることは仕方のないことだと思いますが、奨学金は国の制度ですから、純然たる民間金融機関の融資制度とは違い、救済措置も設けられています。“返済期限の猶予申請”がそれで、一般猶予の場合で通算120か月(10年)を限度として返還の先送りを認める制度があります。

返還期限猶予の承認の目安は給与所得者の場合で年収300万円以内(自営業等の場合で年間所得200万円以内)です。正社員として就職できなかった場合は10年の間にある程度の収入に結びつく定職を見つけてください。

OECD加盟国の中では中・低所得家庭の子が高等教育を受けるためのハードルが高いとはいえ、上述したような二つの公的支援制度がわが国にはあります。

ご相談者さまのような、「うちの子は富裕層の子なんかに勉強で負けてなんかいないわよ」的な気概は、とても大切だと私は思います。それが無くなったら、貧困が限りなく相続され、指導的な立場にある人が庶民感覚のない人だらけの世の中になってしまうからです。


最後になりますが、いわゆる“民間の教育ローン”についてはその性質上当然、営利を目的にしている面がありますので、ここでのご紹介は差し控えさせていただきます。あしからず、ご理解いただきたく存じます。

【参考リンク】
奨学金事業の充実 | 文部科学省

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●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)

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