超えたら働き損? パート主婦を脅かす“130万円の壁”の基礎知識

【ママからのご相談】
こんにちは。パートで週3日コンビニで働いているママです。

職場から、「年収130万円は超えない方が得するよ」と言われるままにしてきました。本当にお得なのでしょうか?

a 子育てと両立しながらお得に働ける場合もある

ご相談ありがとうございます。ファイナンシャルプランナーの木村由香里です。

ワークライフバランスについてまだまだ後進国である日本では、出産や子育てを理由に退職する女性の割合が他の国と比較しても高い状態です。

20代から30代の子育て期に当たる女性の就業率が落ち込んでいるのですが、折れ線グラフで表すとアルファベットの“M”を描くので、M字カーブと呼ばれています。

仕事に割り当てることのできる時間に制約がある女性にとって、130万円の壁を意識しながら家庭と仕事を両立しながらお得に働くことは、受けられるメリットを最大に活用する方法の1つです。

今の働き方と生き方に自信を持ってくださいね。女性の働き方と制度のポイントについて一緒におさらいしていきましょう。

“配偶者控除”と“配偶者特別控除”について

配偶者控除(103万円の壁)

配偶者控除は、

・法律で定められた意味での配偶者であること
・税金を納めている人と生計を一緒にしていること
・1年間の合計所得金額が38万円を越えていないこと

などの要件がそろう人が受けられる控除のことです。

配偶者控除には2種類あり、一般の控除対象配偶者(38万円)と、老人控除対象配偶者(48万円)に向けたものがあります。

また、年収が103万円以下の人だけでなく、公的年金を受給している人には、65歳未満で70万円以上、65歳以上で120万円以上の『公的年金等控除』が適用されます。

配偶者特別控除(141万円の壁)

上でも少しご紹介していますが、年収が103万円を越えると、配偶者控除の代わりに配偶者特別控除が適用されます。

これは、年間所得が76万円未満(給与所得控除の65万円を足して年収141万円未満)の人に限って適用されます。

つまり、年間収入が141万円を越えると、この配偶者特別控除が適用されず、控除額は0円になります。これがいわゆる“141万円の壁”です。

国税庁のHPによると、配偶者特別控除の控除額は以下のように設定されています。

38万円を超え40万円未満……38万円
40万円以上45万円未満……36万円
45万円以上50万円未満……31万円
50万円以上55万円未満……26万円
55万円以上60万円未満……21万円
60万円以上65万円未満……16万円
65万円以上70万円未満……11万円
70万円以上75万円未満……6万円
75万円以上76万円未満……3万円
76万円以上……0円

103万円の壁は気にする必要ナシ!?

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年収が103万円を超えると、所得税を納める義務が発生してきます。

しかし、年収103万円を超えたところで、納めるべき税金は数千円程度なので、あまり気にする必要はありません。

よく「103万円の壁を越えないように」と言われますが、増加する収入に対して所得税の方が高くなることはないからです。

所得が103万円を越えると、“基礎控除(65万円)+給与所得控除(38万円)”で控除される金額を越えるため、年収から103万円を引いた額に10%をかけた金額の所得税が請求されるようになります。

ちなみに、月の給料が平均86,000円以上になると、年収が103万円を越えます。

注意すべきポイントは、奥様の年収が103万円を超えると、家族手当支給の対象外となる会社が多くある点です。

家族手当が充実しているのなら、103万円以下に抑えた方が夫婦の合計手取り収入が高くなる可能性がありますので、確認しておきましょう。

また、夫の配偶者控除(38万円)が控除されなくなりますが、代わりに『配偶者特別控除』(ママの年収によって変動する)が適用されます。

この配偶者特別控除は、夫の所得税がいきなり増加しないように作られたものですが、130万円(夫の扶養から外れる)まではあまり気にしなくても良いということができます。

年収が103万円を越えると、配偶者手当がもらえなくなることも

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配偶者手当とは、家族を養うために苦しんでいる雇用者の生活を少しでも楽にするために企業が支払う手当のことですが、実は配偶者の年収が103万円未満の場合に限定されていることも多いと言われています。

大企業であるトヨタ自動車も同様の形で家族手当を支給しています。

ちなみに、トヨタ自動車は、配偶者手当を廃止して、代わりに子供手当を拡充させようと動いているようで、もしトヨタで配偶者手当が廃止されれば、日本中の企業の制度に影響が出ると言われています。

自営業をしている人には、扶養控除のみが支給される

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上記コラムでも触れられていますが、130万円の壁は自営業の方なら気にしなくても良いとされています。

会社員やパートなどで働いている場合は、“基礎控除(65万円)+給与所得控除(38万円)=103万円”が控除されますが、自営業を営んでいる人にはこの制度がないからです。

しかし、自営業の人には何の控除もないのかというとそうでもなく、夫の扶養内で働いている分には、『扶養控除』(38万円)が控除されます。

また、配偶者控除や配偶者特別控除を受けていると、『青色申告特別控除』として65万円が控除されます。

130万円の壁ができた背景

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まず、最初に確認しておきたい点があります。130万円の壁などを気にする必要があるのは、ご主人がサラリーマンや公務員などお勤めの家庭に限定されます。

ご主人の働き方がフリーランスや自営業なら、収入に関係なく保険料を納める義務があるからです。

たとえば、会社員であれば“健康保険”ですし、公務員は“共済組合”、自営業の方の場合は“国民年金”ですね。

このなかでも、自営業者が加入している国民保険だけが、“被扶養者”という概念がありません

被扶養者とは、公務員や会社員の家族である妻や子どもが保険料を負担せずに、医療給付を受けられるというものです。

しかし、この“被扶養者”の概念は法律で明確に定められていないため、約40年前までは健康保険組合が自分の判断で決めていたとされます。

それを受けた国民は、被扶養者の基準を国が決めるようにと求めるようになり、1977年に厚生省から「年収70万円未満で、かつ夫の年収の半分に満たない場合のみ、妻は被扶養者になれる」といった趣旨の通達がありました。

その後、税制が変化していくのに伴い、被扶養者の年収の基準は上昇していき、1993年には現在と同じ130万円に固定されたと言われています。

130万円の壁の基礎知識

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交通費を含めた年収が130万円もしくは月額108,333円を超えると、ご主人の社会保険の扶養から外れてしまいます。

パート先の社会保険に加入できるのなら、106万円の壁の方と同様に、納める保険料だけ手取りが減ってしまうというデメリットばかりではなく、メリットもあるのであまり気にしすぎることはありません。

保険料分だけ手取り収入が減ってしまう働き損にならないよう、働けるだけ働くという選択肢を検討する価値は十分あります。

パート先が小規模だったりすると、社会保険に加入できないことがあり、自分で国民年金保険料と国民健康保険料を納めることになります。

この場合、働き方によっては最も損してしまうかもしれません。国民年金を支払ったところで、将来の年金額は増えませんし、国民健康保険は割高にも関わらず、傷病手当金や介護休業手当金などの制度もないからです。

年収130万円を大幅に超える見込みがないのなら、130万円以下に抑えて働くほうが得するかもしれません。

130万円の壁は子どものアルバイトにも適用される!?

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130万円の壁と言えば、主婦のパート代がどうのこうのという話が多いですが、実は子どもの所得にも適用されるんです。

子どもの場合は、配偶者控除の代わりに『扶養控除』が適用されますが、この扶養控除は年間年収103万円以下の扶養家族に限り適用されます。

そのため、アルバイトで稼いだ年収が103万円を越えると、扶養者の所得税や住民税が高くなります。

さらに、年間収入が130万円を越えると、親の扶養から外れて自分で健康保険を納めなくてはならないのです。

「うっかり越えてしまった……」なんてことにならないよう、しっかりと計画を立ててアルバイトをするようにしましょう。

なぜ“106万円の壁”ができるのか

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2016年10月から、これまで年間収入が130万円未満とされていた扶養基準が106万円に引き下げられます。

奥様のパート先や働き方よっては、次の全てにあてはまる場合、社会保険に加入する義務が発生するようになります。

(a)従業員501人以上
(b)週20時間以上の勤務
(c)月88,000円以上の賃金(年収106万円以上)
(d)勤務年数1年以上

つまり、これまで130万円未満ギリギリを狙って働いていた方は、扶養から外れて自分で保険料を支払う可能性がでできます

自分の保険料を自分で納めなければならなくなるので、支払う社会保険料の分だけ手取り収入が減ってしまいます。

ただ、将来もらえる年金の額も増えますし、万が一のときには、傷病手当金や介護休業手当金が受け取れるようになります。

これは、短期労働者への健康保険や厚生年金の適用基準の拡大が目的ですが、厚生労働省の見解を要約すると、

・被用者保険の恩恵を受けることができない非正規労働者に手を差し伸べ、社会保険の“格差”をなくすため
・これまでの「働かない方が得」という仕組みをとっぱらって、女性の働きたいという意欲を促進するため

とのことです。

しかし、一方では不足している社会保障の財源を確保するための施策とも考えられています。

106万円の壁に該当する方は、130万円の壁も関係ないので、働けるだけ働くことが最善かもしれません。

新たに構想されている“夫婦控除”とは

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106万円の壁が導入されると、世間の主婦のライフスタイルが変容する可能性がありますが、現在政府では配偶者控除に代わって、“夫婦控除”の導入を検討しているようです。

まだ具体的な法案はでていませんが、狙いとしては、106万円の壁でも触れた「働かない方が得」という仕組みを撤廃して女性の労働時間を増やすことにあるようです。

被扶養者がどんなに稼いでも一定の控除が保障されるとも言われている“夫婦控除”ですが、もし適用されると現在の“103万円の壁”がなくなる可能性があります。

一方、130万円の壁は“配偶者控除”ではなく、社会保険に関係するものなのでなくならないようです。

まとめ

「130万円の壁ができた背景」や「配偶者控除」などについてご紹介してきましたが、いかがでしたか?

現状でもややこしくて分かりづらい控除制度ですが、2016年の10月には106万円の壁が始まり、いずれは“夫婦控除”が適用される日もくるかもしれません。

ワークライフバランスの問題だけでなく、PTAや自治会など地域のボランティア活動や介護など子育て以外にも女性が社会的に担う負担が大きいことも、就業率が上がらない一因だと感じています。

どんなに節約をがんばっても、増税や社会保険料の引き上げで積み重ねてきた苦労が吹き飛んでしまうことも少なくないのです。

子育て世代の投票率が上がるだけで、子育てがしやすい世の中になるための議論が活発になっていくはずです。

家計にも大きく関わる政治にも参加しましょう。選挙に投票に行くだけでも、世の中が変わるきっかけにつながりますよ。

●ライター/木村由香里(ファイナンシャルプランナー)
●追記/パピマミ編集部

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