妊娠初期に「HIV検査」が必要な理由

【女性からのご相談】
妊娠を希望しています。結婚前に性感染症の検査を済ませていて、HIV検査も陰性でした。最近、妊娠初期にHIVの検査が義務づけられていることを知って、疑問に感じています。妊娠してからHIVに感染していることが分かっても、もう遅いのではないですか?

a 赤ちゃんへの感染リスクを最小限に抑えるための検査です。

こんにちは。助産師のHillです。

確かに現在では、妊娠初期に行われる血液検査の中に、HIV抗体価の検査も含まれています。これは、妊婦さん自身の健康維持のためと同時に、赤ちゃんへの感染リスクを最小限に抑えるためでもあります。

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(1)HIVはもう不治の病ではありません

確かに少し前までは、HIVに感染すると、必ずAIDSを発症して死に至ると考えられていました。しかし、医学の発達した今日では、良い薬も開発され、以前のような不治の病ではなくなりました。また、母親が陽性だからと言って、必ずしも赤ちゃんに感染するというわけでもないのです。

まずは母親がHIVに感染しているかどうかを知って、その検査結果を元に赤ちゃんへの感染予防を進めることがとても重要なのです。

(2)赤ちゃんへの感染経路は?

HIVのウィルスは、血液、精液、膣分泌液、母乳に含まれています。誤解されている場合も多いのですが、妊娠中、お母さんの血液と赤ちゃんの血液が混ざり合うことは通常ありません。赤ちゃんに必要な酸素や栄養素は、お母さんの血管から拡散されて胎盤に吸収されるので、実際に血液の交換が起こっているわけではないのです。ですから、妊娠中の感染については、ほとんど心配する必要はありません。

分娩の際には、経膣分娩であれ帝王切開であれ、赤ちゃんがお母さんの血液に触れる危険性がありますから、どちらの場合も、感染のリスクはゼロではありません。

長年の間、HIV感染者の分娩は帝王切開の方が安全だとされてきたため、日本では現在も帝王切開が行われる場合がほとんどですが、近年の研究において、ウィルス量が一定の数字より低い場合、その感染率に違いはないことが分かって来たため、欧米では主に経膣分娩が行われるようになってきました。

アメリカにおける統計によりますと、まだ今のように良い薬が開発される以前、母から子への感染率は20%でした。薬が発達した現在では、感染率は2%まで低下しています。

(3)妊娠中の服薬が胎児に与える影響は?

HIVに感染していることが分かった場合、すぐに抗HIV薬の内服が開始されます。分娩中は、場合によっては注射や点滴による与薬も行われ、産後は、赤ちゃんに対する薬も開始されます。

妊娠中の服薬によって、母体のウィルス量を下げることが出来るので、母親自身の発症を抑えるとともに、赤ちゃんへの感染のリスクも抑えることができます。また、薬は胎盤を通って赤ちゃんにも送られるので、赤ちゃん自身のHIVウィルスに対する抵抗力もアップすることができます。

抗HIV薬が胎児に与える悪影響に関しては、まだ明らかになっていない点がたくさんあります。ただし、薬の副作用を恐れるあまり、薬を使わずに妊娠を継続して分娩に臨めば、赤ちゃんへの感染リスクを大幅に上げてしまうことになります。あるかも分からない副作用の心配をするよりも、とにかく感染を避けることが大切だと言えます。


結婚前、妊娠前に性病検査を済ませることがベストなのは確かですが、万一妊娠してから感染が分かった場合でも、遅すぎることはありません。感染したことは不幸な事故であり、誰の責任でもありません。

今後は母親として、いかにして赤ちゃんを守っていくかを第一に考えながら、薬物療法を行ってほしいと思います。

【参考リンク】
Pregnancy and HIV/AIDS | womenshealth.gov

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●ライター/Hillまゆ子(助産師)

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